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■犬が血尿をして食欲不振はフィラリア症の可能性がある
血尿が出ていて、さらに食欲もない!この症状が見られたら「フィラリア症」の可能性があります。
関東ではもうあまり見かけない病気ですが、まだまだ地方ではフィラリア予防がしっかり行われていない地域もあるので、可能性はゼロではありませんからね。
今回はこの「フィラリア症」について詳しくお話ししたいと思います。
■フィラリア症ってどんな病気?
フィラリア症は別名「犬糸状虫症」とも呼ばれ、ワンちゃんを飼う上で非常に重要な病気といえます。
●原因
まず原因となる「フィラリア」について。
このフィラリアは、寄生虫の一種です。
成虫は“そうめん”のような姿をした細長い白い虫です。
フィラリアは蚊の媒介によって運ばれ、蚊に刺されることで犬の体内に侵入し、犬の心臓に寄生して悪さをします。
フィラリアに感染している犬から、蚊が媒介して未感染の犬へ感染させるというのがほとんどの感染経路です。
感染経路を詳しく見てみると…
蚊が血を吸う時に、フィラリアに感染している犬の血液と一緒にフィラリアの幼虫(子虫)を吸いあげます。
そして、蚊の体内で子虫が育ちます。
この体内にフィラリアの子虫を持った蚊が未感染の犬を刺すことで、フィラリア症の感染が起こります。
蚊が血を吸っている時にフィラリアの子虫は犬の皮下組織や筋肉に侵入します。
そこから毛細血管に入り、さらに太い血管に入り込みます。
血管にさえ入ってしまえば血液の流れに乗って、心臓までは流れていくだけ。
というのが感染経路ですね。
一度心臓にたどり着いたら、フィラリアが寿命を迎えるまでずっと心臓で暮らします。
心臓に入ったフィラリアの成虫がオスメス両方いた場合、心臓の中で子虫を生みます。
子虫は小さいので心臓から出て血流に乗ることが出来、血液と共に全身をめぐる間に成虫になり、また心臓に戻って、そこで暮らします。
これが、フィラリアの悪循環。
多数のフィラリアが寄生した心臓は、徐々に大きくなり(心肥大の状態)、心臓病の症状が現れ始めます。(その他にも腎臓、肝臓、肺にも障害を発生させます。
●症状
主に心臓病の症状が出ます。
フィラリアは肺動脈に多く寄生し障害を受けるため、右心性の心臓病症状が出ます。
《右心性の心臓病症状》
咳
運動不耐性(動くとすぐに疲れてしまい動けない)
削痩(痩せること)
食欲不振
呼吸困難
また、心臓に負担がかかり心不全の状態まで病態が進行すると、静脈血が処理できなくなるため全身の臓器がうっ血(血が溜まってむくんだ状態)を起こします。
肝臓では肝硬変、腎臓は腎不全など全身で様々な臓器不全が起こってきます。
《その他の全身症状》
食欲廃絶(全く食べないこと)
元気低下
削痩(痩せること)
黄疸
腹水の貯留
血尿(腎臓病性)
貧血
血色素尿※
※ 赤ワイン状の血尿。フィラリア症の急性期に見られる。
フィラリアが肺動脈から心臓に移動し右心房と右心室をまたいで寄生すると、弁が閉鎖不全を起こし、大動脈症候群という急性の状態になる。
この際、心臓で処理できなくなった大量の血液成分が行き場を失い、尿として排出されることで、急な血尿が起こる。
●診断・検査
フィラリア検査(フィラリア症の専用検査キットがあり、院内で結果がすぐわかる)
血液検査(全身状態の把握)
レントゲン検査(心臓の大きさなど確認)
エコー検査(心臓の弁の状態などを確認。腹水の状態も確認)
心電図検査(心臓病の状態を把握)
検査結果を総合的に判断し、治療方針を決めます。
■治療は出来るの?
治療できますが、大変難しい…というのが現状です。
① 心臓に寄生したフィラリアを取り出す手術
実際に行っている病院は非常に少ないと思います。
フィラリアに感染しているワンちゃんは麻酔のリスクがとても高い上に、心臓や肺静脈に寄生した多数の虫を引っ張り出す処置は危険を伴うため、実施している病院が少ないのが現状なのです。
② フィラリアの寿命を待つ(成虫の寿命は5〜6年と言われています)
心臓に入った成虫に駆虫薬は効きません。心臓にいる成虫が寿命を迎えて死ぬのを待つことでしか治療できないのです。
ただ、何もせずに待つわけではありませんよ。
駆虫薬は子虫には効きます。
そこで、成虫が産んだ子虫を駆虫し、成虫なるのを阻止します。
獣医師の指示に従って駆虫薬を投薬し、これ以上心臓の中のフィラリア成虫が増えないようにコントロールします。
③ 対症療法
フィラリア自体の治療法は上記ですが、出てきた症状に対しても治療をしていきます。
心臓病の治療は主に投薬です。
肝硬変が原因で腹水が溜まった場合は腹水を抜く処置をします。
腎臓病症状がある時には点滴や投薬を行います。
血色素尿の治療は、手術による虫体摘出が最も即効性がありますが、行えない場合はフィラリアが三尖弁(右心房と右心室の間の弁)から移動して急性期を脱するのを待つ他ありません。
■フィラリア症は予防が大事!
ワンちゃんを飼っている方で、フィラリア予防をしない人なんていない!と信じたいところですが、まだまだフィラリア予防どころかフィラリアを知らないという方がたまにいるので、予防の必要性についても触れておきます。
フィラリア症感染は、予防薬(駆虫薬)を使うことで完全に防げます!!!
人のインフルエンザの予防接種より確実に絶対に感染を防げます!(決まりを守って薬を使っていればですが)
お住いの地域やかかりつけの病院の方針によって「いつからいつまで薬を使うのか」は変わってくるので、時期については動物病院にご確認ください。
通常は蚊が出始めて1ヶ月後の時期から蚊がいなくなって1ヶ月後までです。
(例:蚊を見たのが3月なら飲ませ始めは4月。蚊を見なくなったのが11月なら飲ませ終わりは12月。といった感じ)
予防薬と呼びますが、実は「駆虫薬」だってご存知でしたか?
フィラリアは成虫になると駆虫薬が効きませんが子虫には効きますと上でお話ししました。
子虫が成長して心臓にたどり着く前に駆虫して殺してしまおう!というのがフィラリア症の予防法です。
予防注射のように抗体を作って持続的に予防するわけではなく、蚊に刺されて入ってきた子虫を心臓に行かせないように定期的に駆虫する(殺す)という方法です。
薬を飲んでから次の薬を飲むまでの1ヶ月間ずっと薬が効いてフィラリアに感染しないと思っている方が多いですが、そうではありません。
薬を飲んだ日(飲んだ瞬間)のみ、子虫を殺す効果がありますが、次の日にはもうその効果はなくなっています。
それでも1ヶ月に1回の薬で大丈夫なのは、フィラリアの子虫が皮下組織や筋肉に入ってから心臓にたどり着くまでには2〜3ヶ月かかるため。
投薬の期間を2ヶ月以上空けなければ心臓に到着する前の子虫を駆虫できるので1ヶ月に1回で大丈夫というわけです。
2ヶ月あるから大丈夫〜と投薬を忘れるとフィラリアが心臓に到着してしまう危険が高まるので、余裕を持って1ヶ月毎の投薬を!とお願いしています。
今は、飲み薬だけでなく、おやつ状(ビスケットやジャーキー)の食べるタイプやノミと一緒に駆虫できるスポットオンタイプ、年に1度でOKな注射などもあります。
ワンちゃんの性格や飼い主さんのライフスタイルに合わせて、一番いい方法でフィラリア予防してみてください。
うちに蚊はいない!と言い張る飼い主さんがたまにいらっしゃいますが、そんなわけありません。
ワンちゃんは蚊に刺されても痒くならない動物です。
痒がらないのでワンちゃんが蚊に刺されたことを飼い主さんは気がつきません。
予防すれば完全に防げる病気でワンちゃんが苦しむのはかわいそうですから…
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
フィラリア症の場合は血尿の前に食欲不振や咳の症状が必ずあります。
小さなサインを見逃さずにひどくなる前に病気に気がついてあげたいものです。
それよりもまず、何より予防です。
今までに1度もフィラリアの予防をしていないワンちゃんは、今年はフィラリア予防してくださいね!!!
※フィラリア予防薬の投薬は、必ずフィラリア検査を受けた後にしましょう。
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