「飼い主が帰ってくると嬉しそうにぐるぐる回っている」
「突然犬が首をかしげて一定方向にぐるぐる回るようになった」
同じ「ぐるぐる回る」行動ですが、前者の場合はよくある犬の習性で、後者の場合は病気のサインである可能性があります。
一体、犬はどんな病気になるとぐるぐる回り出すようになるのでしょうか?
動画を交えて詳しく解説していきたいと思います。
犬にはぐるぐる回る習性がある
犬は時折、自分の意志でぐるぐる回り出すことがあります。
以下のケースは、健康な若い頃から日常的に見られている習性や癖のようなものなので心配の必要はありません。
寝床でぐるぐる回る
犬がクッションやベッドなどいつも寝ている場所に行き、しばらくぐるぐる回ってから寝る、という行動を見たことはありませんか?
中にはぐるぐる回る行動の前後に前足で掘るような行動をとることもありますが、これは犬が寝やすいように寝床を快適に整えているだけなので、心配はいりません。
感情の高ぶりでぐるぐる回る
パピヨンやポメラニアンなどの小型犬でよく見られる習性なのですが、喜んで興奮した時や、早くして○○して欲しいなどの欲求からぐるぐる回る行動をすることがあります。
例えば、散歩に早くいきたい、早くご飯が欲しい、大好きな飼い主が帰宅して嬉しいとき、ケージに入れられてしまい出して欲しいときなどに見られます。
それでは実際の動画をご覧いただきましょう。
ポメラニアンちゃんが、興奮した面持ちで吠えながらぐるぐる回っています。
「目が回らずによくこれだけ回転できるな」と、つい感心してしまう程に激しく回っていますが、病気が原因ではありませんのでご安心下さい。
遊びでぐるぐる回る
子犬など若い犬でよく見られる行動ですが、自分の尻尾が気になってぐるぐる回ったり、おもちゃやぬいぐるみなどを口でくわえてぐるぐる回ることがあります。
それでは実際の動画をご覧いただきましょう。
まだ成犬ではないパピヨンちゃんが、ハッと自分の尻尾に気付き、くるくると回り出しています。
この動画のワンちゃんの場合すぐにこの行動を終えているので心配ありませんが、異常な程執拗に行われる場合は、狭いケージに長時間閉じ込められているなどの「慢性ストレス」が原因で引き起こされている行動の可能性がありますので、注意して下さいね。
病気のサイン!病的なぐるぐる回る行動とは?
先ほどの習性によるものではなく、病気が原因で犬がぐるぐる回ってしまうことがあります。
病的なぐるぐる回る行動とは一体どのようなものなのでしょうか?
ちょっと聞き慣れない専門的な単語が出てきますが、できるだけ簡単に解説したいと思います。
病的なぐるぐるは「旋回運動」
本人の意志とは関係なく、ぐるぐる回ってしまう行動を医学的には「旋回運動」と言い、平衡感覚を失い体のバランスを上手く保つことができなくなることによって引き起こされる異常な行動とされています。
旋回運動は「前庭疾患」によって起こる
体のバランスを保つのに必要な平衡感覚は、内耳の「前庭」という器官で頭の回転や傾きを把握し、神経によってその情報が脳に送られてその感覚が生じます。
この平衡感覚を失ってしまう病気を「前庭疾患」と言い、原因が耳にある場合を「末梢性前庭疾患」、原因が脳にある場合を「中枢性前庭疾患」と言います。
旋回運動は「前庭症状」の一つ
前庭が障害されると共通して見られる症状があり、それらを総称して「前庭症状」と言います。
前庭症状には旋回運動の他にも、一方向に首が傾いてしまう「斜頚」や「捻転斜頚」、眼球が一定のリズムで揺れてしまう「眼振」と言われる症状が見られます。
前庭障害になると世界がぐるぐる回っているような感覚に陥るため、激しいめまいやふらつきが引き起こされ、起立困難になったり、嘔吐や食欲が低下したりします。
犬に旋回運動を引き起こす病気とは?
どんな病気になると、犬に旋回運動がみられるようになるのか解説します。
耳の病気(末梢性前庭疾患)
中耳炎、内耳炎
鼓膜の内側の中耳や内耳に炎症が起きる病気で、犬の場合外耳炎や鼻炎などから細菌が耳の奥に広がって引き起こされることが多いです。
この病気になると先ほどの前庭症状の他にも、発熱や食欲不振、耳を触ると痛がる、耳を掻いている、頭を振っている、鼻水やくしゃみが出ているといった症状も合わせて見られることがあります。
放っておくと脳まで細菌が広がってしまい、髄膜炎や脳炎を引き起こすことがあります。
脳の病気(中枢性前庭疾患)
脳腫瘍
人間同様犬にも頭蓋内に腫瘍ができることがあり、最も発生頻度の高いのは脳の周りにある髄膜から発生する「髄膜腫」と言われる腫瘍です。
その他にも「グリオーマ」と呼ばれる脳の細胞から発生する腫瘍、ウェルシュコーギーに発生が多い「組織球性肉腫」などがあります。
脳腫瘍の発生している位置によって症状は変わりますが、前庭症状の他、けいれん発作、元気食欲の低下、ふらつき、徘徊するような痴呆症状、攻撃性が強くなったなどの性格の変化、嘔吐などが見られます。
脳炎(壊死性脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎など)
犬に見られる脳炎では、ジステンパーウイルスや狂犬病ウイルスなどの感染症による脳炎よりも、自己免疫が関連している脳炎の発生頻度が最も多く見られます。
代表的なものとして、壊死性脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎が挙げられます。
壊死性脳炎は、パグやチワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズ、ポメラニアン、フレンチブルドッグ、シーズー、ペキニーズという犬種に限定されて報告されており、1〜3歳程度という若い犬での発症が多いという特徴があります。
この病気になってしまったパグは他の犬種に比べ症状が重かったり非常に早く進行することから、「パグ脳炎」と呼ばれることがあります。
また肉芽腫性髄膜脳脊髄炎は、4〜8歳程度の中齢の小型犬に多く、特にテリア系の避妊雌に多く認められることが知られています。
どちらの脳炎も、発症している脳の場所や進行具合によって症状は変わりますが、前庭症状の他にも、痙攣発作、目が見えなくなる、ふらつき、起立困難などが見られます。
脳萎縮(痴呆)
犬も高齢になると脳が萎縮してしまい、人間と同様に痴呆症状が出ることがあります。
犬が痴呆になると、斜頚や眼振は伴いませんが、旋回運動や無目的な徘徊、無駄吠え(異常に吠え続ける)や壁などに頭を打ち付けたまま動かなくなる、などの症状が見られます。
脳萎縮はどの犬種にも起こりますが、柴犬などの日本犬では特に多い印象があります。
特発性前庭疾患
特発性前庭疾患とは高齢犬によく見られる病気で、何の前触れもなく突然前庭症状が引き起こされます。
なぜこのような病気を発症してしまうのか、原因はわかっていません。
※ちなみに「特発性」は原因不明を意味する言葉で、突然起こる「突発性」と混同しやすいのでご注意下さい。
症状としては、前庭症状の他に、起立困難や嘔吐、食欲不振が出ることがあります。
この病気はとくに治療を行わなくても、発症から数日程度で徐々に症状が改善していき、数週間で前庭症状は消失します。
また、中には後遺症として若干の斜頚が残ってしまうことがあります。
犬の前庭症状を見てみよう【動画あり】
旋回運動や斜頚、眼振といった前庭症状を詳しく知っておきたい、病気のサインを見逃したくないという方のために、動画で解説していきたいと思います。
※以下の動画には病気のワンちゃんが出てきますので、気分が落ち込みやすい方は閲覧をご遠慮下さい。
老犬に突然起こる特発性前庭疾患
ミニチュアダックスちゃんが反時計周りに一定のリズムで回っていますが、これが旋回運動です。
頭も左側に重度に、首まで左に引っ張られるように傾いているので、斜頚の中でも「捻転斜頚」と判断されます。
前庭症状以外に痙攣も引き起こす壊死性脳炎
パグちゃんは目が大きいので目の動きが分かり易いです。
左右に大きく揺れていて眼振を起こしています。
脳炎は若い犬に痙攣発作を起こすことが多く、症状のみで単なる「てんかん」と間違えないように注意しなくてはいけません。
旋回運動、異常に鳴くことが多い痴呆
パピヨンちゃんが大きい円を描くように回っていますが、これは老犬によく見られる痴呆による旋回運動で、特発性前庭疾患と異なり斜頚や眼振などは伴いません。
飼い主が呼んでも気付かない、ご飯が出てもなかなか気付かない、異常な鳴き声を挙げるなどが見られているなら、この病気の可能性が高いです。
さいごに
犬がいつもとは異なるようなぐるぐる回る行動を取り始めたら、前庭症状の可能性がありますので、目の動きや首の傾きに注目して見てみるようにしましょう。
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