犬の換毛期ブラッシング手順|道具選びから皮膚を守るケア工程
犬の換毛期になると、床やソファに抜け毛が増え、ブラシをかけてもかけても毛が取れるように感じることがあります。特に柴犬、コーギー、ゴールデン・レトリーバーなどのダブルコート犬種では、春と秋にアンダーコートがまとまって抜けるため、普段より丁寧なブラッシングが必要です。…

ただし、抜け毛を減らしたいからといって、強い力で何度もブラシを当てればよいわけではありません。皮膚に針金が当たったり、毛玉を引っ張ってしまったりすると、犬が痛みを感じるだけでなく、皮膚のバリア機能を損ねることがあります。換毛期のブラッシングは、毛を取る作業であると同時に、皮膚の状態を確認する時間でもあるんですよ。
ここでは、犬の換毛期ブラッシング手順を、道具の選び方から仕上げまで順番に説明します。毎日長時間がんばる必要はありません。平日は5〜10分ほど、時間に余裕がある日は少し丁寧にお手入れする、という形から始めてあげましょう。
換毛期に抜ける毛は、被毛の内側にたまります
犬の被毛には、大きく分けて上毛と下毛があります。上毛は外側に見える毛で、外部から皮膚を守る役割を持っています。一方、下毛にあたるアンダーコートは、体温を保つための柔らかな毛です。
ダブルコートの犬種では、春と秋の年2回、季節に合わせてアンダーコートが大きく入れ替わります。一般的な時期は春が3月〜5月頃、秋が9月〜11月頃で、1〜2か月程度続くとされています。
とはいえ、すべての犬が同じ日に換毛期を迎えるわけではありません。室内で暮らしている犬は、空調や日照時間の影響で時期がずれることがありますし、換毛のはっきりした波を感じにくい子もいます。カレンダーだけで判断するより、床に落ちる毛の量や、ブラシに付く毛の変化を見ながら調整してあげるとよいでしょう。
アンダーコートが抜け始めたときに、そのままにしておくと、抜けた毛が被毛の内側に残ります。毛が密集した状態では皮膚に空気が届きにくくなり、蒸れやすくなります。皮膚の環境が乱れると、常在菌が増え、膿皮症などの皮膚トラブルにつながることもあります。
換毛期のブラッシングは、抜け毛を床に落とさないためだけではありません。皮膚に風が通る状態をつくり、毎日の変化に気づくためのお手入れです。
犬の換毛期ブラッシングに使う道具と役割
ブラシは一つあればすべてに対応できる、というものではありません。抜け毛を取り除く道具と、毛並みを整える道具では役割が異なります。
まずは、愛犬の毛質や毛の長さに合わせて、必要なものを少しずつそろえていきましょう。最初から多くの道具を買うより、今の被毛の状態に合う一本を選び、使い方に慣れるほうが皮膚を守りやすいですよ。
| 道具 | 主な役割 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| アンダーコート専用ブラシ | 被毛の内側にある抜け毛を取り除く | 強く押し込まず、毛の量を見ながら短時間で使う |
| スリッカーブラシ | 絡まりや抜け毛をほぐす | 針金部分を皮膚に押し当てない |
| ラバーブラシ | 短い毛や表面の抜け毛を集める | 皮膚をこすらず、毛の流れに沿って動かす |
| ピンブラシ | 毛並みを整えながら軽くとかす | 毛玉を無理に引っ張らない |
| 獣毛ブラシ | 表面の毛並みを整え、仕上げる | 抜け毛を取り除く主役ではない |
| コーム | ブラッシング後の絡まりを確認する | 引っかかった場所は力で通さず、戻ってほぐす |
スリッカーブラシは「皮膚に当てない」が基本です
スリッカーブラシは、細い針金状のピンが並んだ道具です。毛の絡まりをほぐしたり、抜けた毛を取り除いたりするのに便利ですが、使い方を誤ると皮膚に刺激を与えます。
手のひらにブラシを当てて、痛くない力加減を確認してから使ってみましょう。ブラシを持つ手に力が入りすぎると、犬の皮膚にも同じ圧がかかります。毛を根元から一気に取ろうとせず、少量ずつ毛束を分け、表面から順に動かしてあげると負担を抑えられます。
ラバーブラシは短毛の犬や、最初の一歩に向いています
ラバーブラシは、ゴム製の突起で抜け毛を集めるタイプです。皮膚への当たりが比較的やわらかく、ブラッシングが苦手な犬の導入にも使いやすいでしょう。
ただし、ラバーブラシだけで被毛の奥にあるアンダーコートをすべて取り除けるとは限りません。短毛の犬の表面ケアや、ブラシに慣れてもらう最初の段階に使い、その後に別の道具を組み合わせる方法もあります。
コームは最後の確認に役立ちます
コームは、ブラシをかけた後に毛の根元まで通るか確認する道具です。耳の後ろ、首まわり、わき、後ろ足の付け根、しっぽの周辺は絡まりやすいため、最後にコームを通してみましょう。
コームが途中で止まる場所には、抜け毛や小さな毛玉が残っている可能性があります。そこで無理に引っ張るのではなく、その部分だけブラシに戻ります。毛束を少しずつ分けながら、毛先からほぐしてあげてください。
大きな毛玉が皮膚の近くで固まっている場合は、家庭で無理に切ろうとしないほうが安心です。皮膚まで一緒につまんでしまうことがあるため、トリミングサロンや動物病院に相談しましょう。
犬の抜け毛ケアは順番で負担が変わります
犬の換毛期ブラッシング手順は、次の流れで進めると、抜け毛を取り除きながら皮膚の状態も確認しやすくなります。
1. 落ち着ける場所と姿勢をつくる
2. 手で被毛全体を確認する
3. 毛の表面から軽くブラシをかける
4. アンダーコートや絡まりを少しずつ取り除く
5. ピンブラシや獣毛ブラシで毛流れを整える
6. 最後にコームで引っかかりを確認する
7. 皮膚の赤みや湿り気がないか見る
1. 落ち着ける場所と姿勢をつくる
床が滑る場所では、犬が足を踏ん張れず、ブラッシング中に体をよじることがあります。滑りにくいマットや、いつも休んでいる場所を使ってあげましょう。
最初から全身を終わらせようとせず、背中や肩など、犬が触られ慣れている場所から始めます。ブラシを見ただけで逃げる子の場合は、まずブラシを近くに置くだけでもかまいません。においを嗅いで落ち着いたら、背中を一度なでるようにブラシを通して終わる、という短い練習から始めましょう。
犬が何度も体を引く、口をなめる、あくびをする、耳を後ろに倒すといった様子を見せたら、刺激が強いのかもしれません。そこで続けるより、一度休憩してあげたほうが、次のお手入れにつながります。
2. いきなりブラシを入れず、手で被毛を確認する
ブラッシング前に、手のひらで被毛全体をゆっくり触ります。ここで確認したいのは、毛のもつれだけではありません。
- 触ると避ける場所がないか
- 皮膚が湿っていないか
- いつもより強いにおいがないか
- かさぶたや赤みがないか
- 脱毛して地肌が見える場所がないか
- 小さなふくらみや傷がないか
皮膚に赤みや傷がある場所、じゅくじゅくしている場所には、ブラシを当てないでください。かゆみが強そうな部分を何度も掻いている場合も、抜け毛を取ることより、皮膚の状態を確認することを優先しましょう。
3. 毛の流れに沿って、表面から軽くとかす
最初から根元にブラシを入れると、抜け毛が絡んで引っ張られやすくなります。まずは毛の流れに沿って、表面を軽くとかします。
背中から始める場合は、首の後ろからしっぽの方向へ、短いストロークで動かします。一度に広い範囲を取ろうとせず、手のひらほどの範囲を区切って進めると、どこまで終わったか分かりやすくなります。
スリッカーブラシを使うときは、ブラシの面全体を皮膚に押し付けないようにします。手首を柔らかく使い、毛先をなでるような感覚で動かしてください。ブラシに毛がたまったら、いったん取り除きます。毛が詰まったままではブラシが動きにくくなり、余計な力が入りやすくなるためです。
4. アンダーコートは毛束を分けて少しずつ取る
換毛期のアンダーコートは、表面の毛の下にまとまって残っています。片手で毛を少し持ち上げ、下の層を見ながらブラシを入れていきます。
このとき、ブラシを深く差し込んで一気に取ろうとしないことが大切です。毛の根元に近づくほど、皮膚の動きや犬の反応を見ながら、浅く短く動かしてあげましょう。
抜け毛が多い日は、ブラシに取れた量を見ると、つい続けたくなるかもしれません。でも、毛が取れることと、犬の皮膚に負担がないことは別です。ブラシの後に皮膚が赤くなっていないか、犬がその場所を気にしていないかを確認しながら進めます。
5. 毛の流れを整えて、6. コームで仕上がりを確認する
抜け毛を取り除いたら、ピンブラシや獣毛ブラシで毛流れを整えます。最後にコームを使い、首まわりや耳の後ろ、わき、足の付け根などを確認します。
コームがすっと通れば、その範囲はひとまず終了です。引っかかったときは、コームで何度も引くのではなく、ブラシで毛先からほぐしていきます。毛玉の部分を片手で皮膚から離すように持ち、皮膚が引っ張られない状態を作ると、刺激を抑えやすくなります。
7. 終わったら皮膚と犬の様子を見てあげる
ブラッシング後には、皮膚が赤くなっていないか、細かな傷がないかをもう一度見ます。犬がいつもより体を掻く、ブラシをかけた部分をなめ続けるなどの変化があれば、その道具や力加減が合っていない可能性があります。
お手入れの最後には、声をかけたり、犬が喜ぶ時間をつくったりしてあげましょう。ブラッシングが終われば安心できる、と犬が覚えてくれると、次回の負担も少しずつ軽くなります。
犬のスリッカーブラシの使い方で迷ったとき
スリッカーブラシは便利ですが、使う人によって力加減が変わりやすい道具です。毛が取れないとき、無意識に押し付けることがありますが、まず見直したいのは力ではなく、毛の分け方とブラシを入れる角度です。
力加減は「皮膚を押さない」ことを基準にする
スリッカーを手の甲に当て、痛みがない程度の力で動かしてみます。そのまま犬の皮膚に当てるという意味ではなく、自分の手で刺激の強さを確認するためです。
ブラシのピンが毛を通る感触があり、皮膚を直接こすっている感じがなければ、ひとまず力は強すぎないでしょう。逆に、ブラシを動かした場所が赤くなる、犬が身をよける、毛を引っ張られて振り返る場合は、力を弱めるか、道具を変えてあげてください。
毛玉は引っ張らず、周囲からほどく
毛玉を見つけたときは、毛玉の中心を直接引っ張るのではなく、周囲の毛を少しずつ分けます。毛先側からブラシを入れ、通る部分だけを何回かに分けてほぐします。
毛玉が皮膚に密着している場合、犬の皮膚も一緒に動いてしまいます。見た目には小さな毛の塊でも、犬にとってはかなり痛いことがあります。家庭でのケアでほどけないときは、無理に続けなくて大丈夫です。
皮膚が見える場所はブラシを浅くする
お腹、わき、内股などは毛が薄く、皮膚もやわらかい部分です。背中と同じ感覚でブラシを入れると、刺激が強くなります。
体の部位によって、道具と時間を変えてあげましょう。背中や胸は少し丁寧に、わきや内股は短時間で、毛先を整える程度にします。全身を同じ回数、同じ強さでとかす必要はありません。
換毛期のブラッシング頻度と時間の目安
ダブルコート犬種の換毛期は、毎日のブラッシングが目安です。ただし、毎日30分かけなければならないという意味ではありません。平日は5〜10分程度に区切り、背中だけ、後ろ足だけというように範囲を分けてもかまいません。
丁寧なお手入れができる日は、全身で30分程度を目安にしてもよいでしょう。犬が疲れたり嫌がったりする場合は、時間よりも落ち着いて終えられることを優先します。
| 時期・被毛の状態 | 頻度の目安 | 進め方 |
|---|---|---|
| ダブルコートの換毛期 | 毎日 | 5〜10分を基本に、必要な部分を分けて行う |
| ダブルコートの通常期 | 週1〜2回、または2〜3日に1回 | 毛玉ができやすい場所を中心に整える |
| 短毛の犬 | 週1〜2回程度から調整 | ラバーブラシなどで表面の抜け毛を集める |
| ブラッシングが苦手な犬 | 1回を短くして回数を分ける | 背中だけ、首だけなどで終えてよい |
| 毛玉ができやすい犬 | 状態を見ながらこまめに | 耳の後ろ、わき、足の付け根を重点的に確認する |
短毛種やシングルコートの犬では、ダブルコート犬種のような季節性の換毛を同じように感じないことがあります。ただし、短毛の犬でも日常的に毛は抜けますし、皮膚の状態を確認するケアは役立ちます。犬種だけで決めつけず、実際の抜け毛や被毛の絡まり方に合わせて調整してあげましょう。
換毛期の皮膚トラブルを防ぐために、ブラシ以外でできること
ブラッシングは皮膚ケアの一部です。毛を取り除くだけでなく、洗いすぎや乾燥、蒸れを重ねないことも、皮膚のバリア機能を守るために大切です。
ブラッシング前に皮膚の異常を探す
毎日のお手入れでは、皮膚をじっくり診察する必要はありません。手で触れながら、昨日と違うところがないかを見るだけで十分です。
特に確認しやすいのは、次のような場所です。
- 耳の後ろや首まわり
- わきや胸の内側
- お腹や内股
- 指の間や足先
- しっぽの付け根
- お尻の周辺
赤み、湿り気、強いにおい、かさぶた、繰り返す脱毛、強いかゆみがある場合は、ブラッシングで様子を見るより、動物病院に相談してあげましょう。抜け毛が多い時期でも、部分的な脱毛や皮膚の変化まで換毛期のせいとは限りません。
シャンプーは回数より、すすぎと乾燥を整える
換毛期に抜け毛が増えると、シャンプーで一気に流したくなることがあります。しかし、洗う回数を増やしすぎると、皮膚が乾燥し、バリア機能が乱れることがあります。
シャンプーをするときは、犬用の製品を使い、皮膚を強くこすらないようにします。すすぎ残しがあると刺激になるため、首やわき、足の付け根まで丁寧に流してあげましょう。
乾かすときも、熱や風を一か所に集中させないことが大切です。被毛の表面だけ乾いていて、根元や皮膚の近くが湿っていると、蒸れにつながることがあります。タオルで水分を取り、犬が嫌がらない範囲で、毛を分けながら乾かしていきます。
保湿剤やスプレーは皮膚の状態に合わせる
乾燥しやすい犬では、犬用の保湿ケアを取り入れることがあります。ただし、香りの強い人用製品や、犬の皮膚に使えるか分からないものを自己判断で塗るのは避けましょう。
皮膚に赤みやかゆみがある場合、保湿だけで落ち着くとは限りません。薬用シャンプーやかゆみ止めスプレーについても、症状によって適した使い方が異なります。皮膚トラブルが続くときは、製品を次々に変えるより、動物病院で状態を確認してもらうほうが、犬の負担を減らしやすくなります。
部位ごとに変える、やさしいブラッシングの進め方
全身を同じ手順でとかすと、皮膚の薄い部分に負担がかかることがあります。部位ごとに、ブラシの深さと時間を変えてあげましょう。
背中と胴体
比較的ブラシをかけやすい場所ですが、毛が多いからといって深く押し込まないようにします。首の後ろから背中、腰に向かって毛流れに沿って進めます。
抜け毛が多い部分は、表面を一度とかしてから、毛束を分けて内側を確認します。ブラシに毛がたくさん付く場合も、何度も同じ場所をこするのではなく、数回で区切って休憩しましょう。
首まわりと胸
首輪やハーネスが当たる場所は、毛が絡まりやすく、皮膚にも摩擦が加わります。道具を入れる前に、首輪やハーネスを外し、毛の状態を手で確認します。
毛玉があるときは、皮膚を片手で支えながら、毛先からゆっくりほどきます。首の前側や胸は犬が顔を動かしやすいため、ブラシを目や口元に近づけないよう注意してあげてください。
わきと内股
わきや内股は、皮膚同士が触れやすく、毛も絡まりやすい部分です。犬を無理に横向きに固定するより、立ったまま片足を少し持ち上げ、短時間で確認するほうが落ち着く子もいます。
毛が少ない部分では、スリッカーブラシよりピンブラシやコームのほうが扱いやすい場合があります。引っかかりがなければ、無理にブラシを何度も通す必要はありません。
足先と指の間
足先は散歩後の汚れや湿気が残りやすい場所です。毛をとかす前に、濡れていないか、赤くなっていないかを見てあげましょう。
指の間に毛玉がある場合、コームを強く通すと痛みが出ることがあります。小さな絡まりでも犬が嫌がるなら、無理せず相談してください。足先を触られること自体が苦手な子は、日頃から一度触って終わる練習を重ねるだけでも十分です。
しっぽとお尻の周辺
しっぽの付け根やお尻の周辺は、毛が密になりやすく、抜け毛がたまりやすい場所です。犬が振り返りやすいので、ブラシを持っていない手で体を支えながら、短い時間で済ませます。
汚れやにおいが気になる場合、毛だけの問題ではないこともあります。皮膚の赤みや湿り気、排泄物の付着がないかを確認し、気になる状態が続くときは動物病院に相談しましょう。
換毛期にやりがちなブラッシングの失敗
換毛期は毛が多く抜けるため、飼い主さんも焦りやすくなります。ここでは、皮膚や犬の気持ちに負担をかけやすい方法を、別のやり方に置き換えてみます。
抜け毛が取れるまで同じ場所を続ける
ブラシをかけると次々に毛が取れるため、終わりが見えなくなることがあります。しかし、すべての抜け毛を一度で取り切る必要はありません。
同じ場所を何度もこすると、毛ではなく皮膚への刺激が増えます。数回とかして毛の量が減ったら、次の範囲へ移りましょう。残った毛は、次のお手入れで少しずつ取っていけば大丈夫です。
毛玉を力で引っ張る
毛玉を引っ張ると、皮膚まで動いて痛みが出ます。犬が嫌がるのは、ブラッシングが嫌いだからではなく、毛が引っ張られているからかもしれません。
毛玉の周囲から毛束を分け、毛先からほぐします。ほどけないものは、無理に家庭で処理しない選択も必要です。トリミングサロンや動物病院に相談してあげましょう。
犬が嫌がっているのに終わるまで続ける
全身を一日で終わらせることより、ブラッシングへの苦手意識を強くしないことを優先します。
今日は背中だけ、明日は胸と前足だけという進め方でかまいません。換毛期が長く続く子でも、毎日少しずつなら、犬にも飼い主さんにも続けやすい形をつくれます。
ブラシを共有して、汚れを残す
ブラシに付いた毛や皮脂、汚れをそのままにしておくと、次のお手入れで被毛に戻ってしまいます。使い終わったら毛を取り除き、製品の表示に合わせて清潔に保ちましょう。
複数の犬と暮らしている場合は、皮膚トラブルがある子と健康な子で道具を分けることも検討します。ブラシを清潔に保つことは、特別な作業ではなく、日常の衛生管理の一部です。
春と秋の換毛期、ケアの組み立て方
春と秋は、まとまった抜け毛が出やすい時期です。換毛期の始まりを感じたら、いきなり長時間のブラッシングに切り替えるのではなく、毎日の短いケアを習慣にしていきます。
春の換毛期
冬の保温に役立っていたアンダーコートが抜け始めるため、被毛の内側に柔らかな毛がたまりやすくなります。背中や腰だけでなく、胸、首まわり、後ろ足の付け根まで確認してあげましょう。
気温が上がる時期は、ブラッシング中に犬が暑がることもあります。室温を整え、短時間で区切りながら進めると負担を抑えやすくなります。
秋の換毛期
夏の被毛から冬の被毛へ変わる時期です。春と同じようにアンダーコートが抜けますが、室内環境によって始まる時期や毛の量には個体差があります。
秋は散歩後に足先やお腹が湿ることもあるため、ブラッシング前に水分や汚れを取り除きます。湿った毛を無理にとかすと絡まりやすく、皮膚への摩擦も増えます。
室内飼育では「毛の変化」を目安にする
空調を使う家庭では、春と秋にきれいに分かれず、抜け毛が長く続くように感じることがあります。月だけを目安にする必要はありません。
ブラシに付く毛の量が増えたとき、毛の内側にふわふわした毛がたまっているとき、被毛の通気性が落ちているように感じるときに、頻度を少し上げます。一方で、抜け毛が少ない時期は、週1〜2回や2〜3日に1回程度のケアに戻してもよいでしょう。
ブラッシングを嫌がる犬には、道具より先に順序を整える
ブラッシングが苦手な犬に対して、より高価なブラシへ変えるだけでは、うまくいかないことがあります。痛かった経験や、長時間拘束された経験があると、道具を見ただけで身構えてしまうからです。
次のように、工程を小さく分けてみましょう。
1. ブラシを見せて、犬が落ち着いていれば終える
2. ブラシを体に近づけるだけにする
3. 背中を一度だけとかして終える
4. 犬が平気な場所を数回とかす
5. 休憩をはさみ、別の部位へ進む
6. 最後に犬が安心できる時間をつくる
この練習では、たくさん毛を取れたかどうかを評価しません。犬が逃げずにいられた、ブラシを見ても落ち着いていた、という小さな変化を積み重ねていきます。
足先や耳の後ろなど、苦手になりやすい場所は、普段から触れる練習を短く行います。触ってすぐ離す、足先を包んですぐ終えるなど、犬が不快になる前に終えてあげることがコツです。
毎日の5分は、完璧な全身ケアではなくても、皮膚の変化を見つけるには十分な時間です。続けられる長さに整えてあげましょう。
ブラッシングで気になる症状が見つかったら
換毛期は毛が抜けるため、皮膚の状態が見えやすくなる一方、異常を季節のせいだと思いやすい時期でもあります。
次のような変化がある場合は、ブラッシングを強くして解決しようとせず、動物病院へ相談する準備をしましょう。
- 体の一部だけ毛が薄くなっている
- 赤みやかさぶたがある
- 皮膚が湿っている、膿のようなものが付いている
- 強いにおいやべたつきが続く
- 何度も掻く、なめる、噛む
- ブラシを近づけると特定の場所だけ痛がる
- 耳や足先などを繰り返し気にしている
皮膚のトラブルは、原因によって必要なケアが異なります。乾燥しているのか、蒸れているのか、アレルギーや外部寄生虫などが関係しているのか、見た目だけでは判断しにくいこともあります。
受診するときは、いつから変化があったか、どの場所から始まったか、ブラッシングやシャンプーの後に変化したかを伝えられると、状態を整理しやすくなります。写真を撮っておくのも役立ちますが、撮影のために皮膚を何度も触る必要はありません。
今日から始める換毛期のケア計画
最後に、犬の換毛期ブラッシングを生活に取り入れるための、無理のない流れをまとめます。
まず用意するもの
- 愛犬の毛質に合うブラシ
- 仕上げ用のコーム
- 取り除いた毛を入れる袋や容器
- 滑りにくいマット
- 必要に応じてタオル
ブラシは、針金の先端が尖りすぎていないか、持ち手が滑らないか、犬の体の大きさに合っているかを確認します。道具の形より、飼い主さんが力を調整しやすく、犬が嫌がらずに使えることを優先してあげましょう。
平日の5〜10分
1. 背中や首の後ろを手で確認する
2. 表面を毛流れに沿って軽くとかす
3. 抜け毛が多い範囲を少しだけ処理する
4. 皮膚の赤みや犬の反応を見る
5. 落ち着いているうちに終える
毎日同じ部位を完璧に仕上げる必要はありません。月曜日は背中、火曜日は胸と首、水曜日は後ろ足というように分けても、数日で全身を確認できます。
時間に余裕がある日の丁寧なケア
休日などに時間が取れる日は、毛束を分けながらアンダーコートを確認し、最後にコームを通します。ただし、30分続けることが犬の負担になるなら、途中で休憩をはさんでください。
ブラッシングの後にシャンプーを行う場合は、先に抜け毛や絡まりをある程度取り除いておくと、洗いやすくなります。シャンプー後はすすぎと乾燥を丁寧に行い、皮膚の湿り気が残らないように確認してあげましょう。
換毛期の抜け毛は、すぐにゼロにはできません。けれど、正しい順番で少しずつ取り除けば、被毛の内側に毛がたまりにくくなり、皮膚の変化にも気づきやすくなります。
犬のブラッシングは、飼い主さんが一人で完璧にやり切るための作業ではありません。愛犬の反応を見ながら、道具を変え、時間を短くし、必要ならプロの手を借りていけば大丈夫です。毎日少しずつ、触れながら様子を見てあげること。それだけでも、私たちと愛犬の皮膚ケアはきちんと前に進んでいきます。完璧を目指さなくてよいのです。続けられるやさしい方法を、一緒に見つけていきましょう。
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